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2019.03.25

抗生物質の適正使用について

こんにちは、月曜日午後、木曜午前、金曜午前午後、第1~3土曜日の診療を担当している医師の竹田将一郎です。
今回は、抗生物質の適正使用について少しお話をしたいと思います。

一般の人からみると細菌(ばい菌)という言葉には悪いイメージしかないと思いますが、もともと人間の体にはいたるところに細菌(ばい菌)がいます。
これを常在菌といいます。厳密に無菌状態の人はいません。常在菌はたくさん種類があり、それらは健常な人では増えすぎず/かたより過ぎずに存在しています。
つまり健康な人は、常在菌とバランスよく共生している状態なのです。
皆さんがよく耳にする代表的な例を挙げると、腸内細菌がそれにあたります。腸内細菌のバランスが良くないと健康は維持できません。耳鼻咽喉科で診療する部位にも言えることなのです。

日本人は清潔意識が高く、実際に細菌感染は様々な疾患・症状を引き起こすことから、日常診療においても患者さんの方から抗生物質の処方を求められるケースも少なくありません。
強力な抗生物質を内服すると直ちに病状の改善が認められることも少なくないので、特に薬の手に入りやすい先進国では、やや過剰な抗生物質使用が行われてきた傾向があります。
しかし、むやみに抗生物質を乱用すると常在菌のバランスを崩してさらに健康を損ねたり、耐性菌という抗生剤が効かない細菌の出現(変異/進化)を促したりすることになります(これを薬剤耐性=AMR;Antimicrobial Resistanceといいます)。したがって抗生物質は必要な病態に必要最小量を使用することが以前から鉄則とされています。

耳鼻科疾患では、本邦の急性中耳炎の起炎菌に耐性菌が多いことが報告されており、抗生物質の適正使用を含めたガイドラインの作成(初版;2006年)が行われております。
これは世界的にも問題になっており、世界保健機構(WHO)は2015年5月「薬剤耐性(AMR)に関するグローバル・アクション・プラン」を採択しました。
この流れを受け、2016年6月にわが国で行われた伊勢志摩サミットでは、G7諸国がさらに強調してAMRに取り組む方針が示されました。
これは簡単に言うと、「統計的エビデンスや検査結果に基づいた抗生物質処方を徹底し、不必要な処方や必要以上に強力な抗生物質の投与をこれまで以上にしないようにしましょう。」ということです。
我が国の厚生労働省もこの動きに沿った指導を近年強化しています。この取り組みは現在治療されている方々の医療の質を上げるだけでなく、将来耐性菌に悩まされる人を減らすためにも大切なことだと思われます。

たとえば感冒(上気道炎)では、抗生物質が必要な症例は10%以下であるとの報告もあります。
逆に言うと抗生物質が必要な症例を見極めるのが我々医師の役割です。
今回は少し長くなりましたが受診の際には、以上を踏まえたうえで、お薬の種類や期間を相談させていただければ幸いです。