耳鼻科医が語るアレルギーの話

【3】抗体の正体・IgE

スギ花粉などの抗原が体に入ってきたときに迎え撃つ抗体、この正体はIgE(アイ・ジー・イー)という免疫グロブリンの一種です。

免疫グロブリン

免疫グロブリンとはその名の通り、免疫をつかさどるたんぱく質なのですが、いくつかの種類があります。

アレルギー反応をつかさどるのがIgEで、ほかにウィルスや細菌に対して働くIgA、IgG、IgMなどの免疫グロブリンがあります。

IgEは日本人医師が発見した物質としても有名です。抗体は、異物が体内に入ってきて敵とみなされた場合に初めて作られるというお話を前回しました。そう、スギ花粉の成分(スギ花粉全体ではなく、一部の構造物)にだけ反応する抗体が作られ、次回、同じものが体内に入ってきたときにはすぐに攻撃できる体制を作っているのです。

だから、アレルギー反応が起こるのは体内にその抗原が2回目以降に入ってきたときなのです。ですから、私たちの体の中には数千万から数億種類の抗体(IgE)が存在すると推定されています。

共通抗原性

ただし、初めて体内に入ってもアレルギー反応を起こす場合があります。

例えば、スギ花粉症の人は同時にヒノキ花粉症を発症している人が多いのですが、これは、スギ花粉の成分とヒノキ花粉の成分の構造が似ていたり、共通の構造であったりするため、スギ花粉症の時に反応する抗体がヒノキ花粉の成分にも反応してしまうためです。このことを共通抗原性といい、種々の果物や野菜、花粉で見られます。しかし、これもまた個人差があって、反応は様々なのです。

環境で抗体量は変化する

一般的には、抗原が体内にたくさん入れば入るほど、体内での抗体量も多くなります。逆に抗原が入らない環境下では徐々にその抗体量も低下していきます。

例えば、ひどいスギ花粉症の人が沖縄(スギ花粉が存在しない)で長期間過ごすと、血液中のスギ花粉にだけ反応する抗体量は減っていきます。しかし、完全になくなってしまうことはありません。スギ花粉のある環境に戻ると、即座に大量の抗体が産生されてしまいます。

ですから、花粉のない環境下で楽に過ごせていても、花粉の飛散する土地に戻ってくると、初日くらいは少し楽かもしれませんが、すぐに以前と同等の症状が出ることになります。