- アレルギー性鼻炎(花粉症)とは何か
- アレルギー性鼻炎(花粉症)はどうして起こるのか
- アレルギー性鼻炎の原因となる物質(アレルゲン)
- アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状
- アレルギー性鼻炎(花粉症)の検査
- アレルギー性鼻炎(花粉症)の対処法
- アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療
- 院長が語るアレルギーの話
アレルギー性鼻炎(花粉症)とは何か
免疫反応が必要以上にはたらいて、かえって体に負担になるような症状を引き起こすことをアレルギーといいます。アレルギー疾患の中でも、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状が表れるものをアレルギー性鼻炎といいます。
そのアレルギー反応を起こす原因となる外からの異物のことを「抗原(こうげん)」または「アレルゲン」といいます。抗原には、ハウスダスト・ダニや、スギ・ヒノキに代表される花粉など、様々なものがあります。
「アレルギー性鼻炎」と「花粉症」の違いとは?
アレルギー性鼻炎は、花粉だけではなく、ダニ等、色々な物質を吸い込んで、鼻にアレルギー症状を引き起こす病気です。
一方、花粉症は、花粉に原因が限定されますが、鼻症状ばかりでなく、結膜炎や湿疹なども花粉が原因なら花粉症です。
アレルギー性鼻炎(花粉症)はどうして起こるのか
抗体が作られ、マスト細胞にくっつく
スギ花粉の成分などの抗原が鼻の粘膜から体の中に入ると、体内に抗体(こうたい)が作られ、マスト細胞という免疫をつかさどる細胞とくっつきます。
抗体と抗原が合体してアレルギー反応を起こす
再び抗原が体内に侵入すると、マスト細胞表面の抗体と抗原とが合体してヒスタミンなどの化学物質が放出されます。このヒスタミンなどの化学物質が鼻水・鼻づまり・くしゃみなどのアレルギー反応を引き起こします。
アレルギーの性質として、抗原と抗体は1対1の関係にある点が挙げられます。すなわち、スギ花粉(の成分)が体内に入ってきたとき、それに反応する抗体はスギ花粉だけにしか反応しない、専用の抗体です。
アレルギー性鼻炎の原因となる物質(アレルゲン)
花粉
花粉症は、スギなどの花粉(抗原)が原因となって起こるアレルギー疾患の一つです。特にスギ花粉症は冬の終わりから春にかけて、毎年多くの人を悩ませています。
日本では、スギのほかにもヒノキ、カモガヤ、ハルガヤ、ブタクサ、ヨモギなど約50種類の植物が花粉症を引き起こすとされています。
ハウスダスト
家の中のチリ・ホコリの中でも、特に1mm以下の目に見えにくいサイズのものを「ハウスダスト」といいます。ダニの死骸やフン、カビ、細菌、花粉、繊維のクズ、皮膚片やフケ、ペットの毛、食べカス、タバコの煙や排気ガスなどが含まれます。
アレルギー性鼻炎(花粉症)の症状
アレルギー性鼻炎の症状としては、主に「透明でサラッとした鼻水が出る」「鼻づまり」「くしゃみが連発する」の3つが挙げられます。
鼻水・鼻づまり・くしゃみが起こる理由
くしゃみは鼻に入った異物(外敵)を風圧で鼻の外へ吹き飛ばすために起こります。そして、風圧で取り除けない異物を水で洗い流すために鼻水が出ます。いずれも異物を鼻の外へ排出するために起こる反応です。さらに異物の侵入を阻止するため、鼻の粘膜が腫れて、異物の侵入をブロックします。この鼻粘膜の腫れによって鼻づまりが起こります。つまり、アレルギーの症状は、異物である花粉を体の外に出すため、また体に入らないようにする、防御反応(免疫)なのです。
他には目やノドに炎症が生じることで、目の痒みや流涙、咳が止まらない、ノドがイガイガする等があります。
また、アレルギー性鼻炎に慢性の副鼻腔炎(蓄膿症)を伴う場合があり、アレルギー性副鼻腔炎と呼ばれます。
「モーニングアタック」とは
朝起きがけにくしゃみ、鼻水の症状が出ることを「モーニングアタック」といいます。寝ている間に床に落ちた花粉やハウスダストを吸い込んだり、起床時にアレルゲンが舞い上がることによって生じます。
他に、自律神経の乱れも原因の一つとされます。日中の活動時に優位になる「交感神経」と睡眠時や休息中に優位になる「副交感神経」が切り替わる際に両者のバランスが崩れ、鼻の刺激に過敏になるためです。
アレルギー性鼻炎(花粉症)の検査
鼻腔内所見
直接観察して、鼻水や腫れを確認します。
血液検査
2種類の検査があり、血中の総IgE量を調べる検査と、血液中のIgE抗体の値によって様々なアレルギーを特定する検査があります。
鼻汁好酸球検査
鼻汁を採取して好酸球の数を測定します。好酸球は白血球の一種で、アレルギー性鼻炎では鼻粘膜に好酸球が増加します。
アレルギー性鼻炎(花粉症)の対処法
アレルギー性鼻炎の対策には、まずはアレルギーの原因物質を近づけないようにすることが大切です。
花粉症対策
身体に花粉を入れない
- 花粉が飛散しやすい、午前中や夕方の外出を避ける
- マスクをする
- ゴーグルをする
- 鼻の中にクリームを塗って、花粉の侵入を防ぐ
屋内に花粉を入れない
- 外出の服装は花粉が付着しにくいツルッとしたものを着る
- 外出時、帽子をかぶる
- 帰宅時、頭から足首までよく払ってから家に入る
- 窓や扉の隙間に目地をする
- 空気清浄機を使う
- 整理整頓し、花粉がたまる場所を減らす
ダニ・ハウスダスト対策
整理整頓・片付け
椅子や家具はできるだけスキッと、必要最小限のものだけを置くようにしましょう。ホコリをたまりにくくすることと掃除をしやすい環境を整えることが大切です。
起毛された素材を避ける
床材やカーテン、カーペットはできるだけ起毛された素材は避けてください。ぬいぐるみやクッションは置かないようにし、衣類はきっちりと片づけましょう。
こまめな換気と掃除
換気は毎日必ず行い、掃除は2日に1度は丁寧な掃除機がけを行ってください。
床がフローリングの場合には、掃除機をかける前にフローリング・ワイパーで拭き掃除をし、掃除機の排気によるホコリの舞い上がりを防ぎます。
空気清浄機も掃除中と掃除終了後一定時間稼働させると効果が上がります。
掃除は部屋を絞って徹底的に
すべての部屋の掃除を継続して行うことは不可能だと割り切って、1部屋しかできない場合は寝室、2部屋できる場合は寝室と居間に絞ります。
湿度管理
湿度を下げるため、風通しを良くします。梅雨の時期には除湿器の使用がおススメです。
布団の掃除がけ
掃除機をゆっくり動かし、1㎡に20秒以上(掛け布団なら、片面1分あまり)かけることを心がけます。四隅にダニがたまりやすいので、念入りに行います。
布団の天日干し
週2回以上行ってください。布団乾燥機の使用も有効です。
布団は叩かず、表面のホコリを拭き取る程度にしてください。布団を叩くと中のダニの死骸やフンが細かくなり、除去しにくくなります。面倒でも、シーツは外して洗濯し、布団だけを干してください。
布団の丸洗い
シーズンに1度は丸洗いできる洗濯機を持っておられる方はぜひ行ってください。コインランドリーの大型洗濯機でも可能です。
布団の買い替え
とりあえず大きな効果が期待できます。
防ダニカバー
ダニを通さないカバーをマット・布団・枕にかけます。
布団のクリーニング
ダニ対策用の熱処理をするのかどうか確認して依頼しましょう。大きな効果があります。
自宅で出来るセルフケア「鼻うがい」
「鼻うがい」とは鼻洗浄とも呼ばれ、代表的なアレルギー性鼻炎(花粉症)のセルフケア方法のひとつです。鼻の粘膜に付着した花粉やハウスダストなどのアレルギーの原因物質を洗い流すことで、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を緩和します。
他にも風邪の予防や、副鼻腔炎(蓄膿症)の予防・症状緩和の効果が期待できます。
鼻うがいのやり方
- 前かがみの状態で「あー」と声を出しながら、洗浄液を鼻に流し込みます。
- 流し込んだ洗浄液を反対の鼻の穴から出します。(難しければ流し込んだ鼻の穴から出しても構いません)
- 洗浄後にやさしく鼻をかみます。
アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療
薬物療法

抗ヒスタミン薬
最も一般的に使用されている薬剤で、鼻水を抑えます。眠気などの副作用がありますが、近年は眠気の出にくい薬もあります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬
鼻づまりを改善する作用があります。
ステロイド点鼻薬
鼻の炎症を抑えます。ステロイドは内服薬の場合は長期の服用で様々な副作用が出る可能性のある薬ですが、点鼻の場合は長期の使用でもほとんど副作用の心配がないといわれています。
貼付薬
体に貼り付けるタイプの薬も登場しています。これは、効果の持続時間が比較的長いという利点と飲み薬のように一気に血中濃度が上がらないので眠気が出にくいという利点もあります。
抗IgE抗体製剤(ゾレア®)
重症スギ花粉症の方にのみ可能な治療で、抗体とマスト細胞との付着を防ぐことでアレルギー反応そのものを起こさせないはたらきがあります。これによって従来の薬より上流でアレルギー反応を抑えることができます。
薬価が高価、かつ重症アレルギーの人にしか使用が認められていないため、すべての方が治療対象となるわけではありませんが、従来の治療で楽にならない場合は一度ご相談ください。
アレルゲン免疫療法
減感作療法とも呼ばれ、アレルギーの原因となるアレルゲンを少量から投与することで体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を和らげる治療法です。
これまでは皮下注射による皮下免疫療法が行われてきましたが、経口の投与による舌下免疫療法は自宅での服用が可能なため、患者さんの負担を軽減する新たな治療法として注目されています。治療は2~3年の長期にわたり、花粉飛散前からの開始が必要となります。
当院ではこの、舌下免疫療法を行っております。スギ花粉症とダニアレルギーの2種のアレルギーの治療が可能です。
手術
手術によってアレルギー反応が起こりにくくする、アレルギー反応が起こっても症状(くしゃみや鼻水)として現れにくくすることが可能です。
手術方法としては大きく2種類に分けられます。
鼻レーザー治療(下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術)
粘膜を焼いてアレルゲンに反応しにくくすることで、一時的にアレルギー発症を抑える効果が期待できます。
後鼻神経切除術
レーザーでの治療が効かない方・適さない方には、くしゃみと鼻水を引き起こす神経を鼻の中で切断し、それらの症状を抑制します。
また、症状の原因が、鼻中隔の湾曲や鼻の内側の構造にもあると認められた場合には、以下のような手術を同時に行います。
粘膜下下鼻甲介骨切除術
下甲介の骨を粘膜から剥離・除去します。鼻腔の拡大となり、鼻づまり緩和の高い効果が期待されます。
鼻中隔矯正術
鼻の左右を仕切る壁(鼻中隔)が曲がって鼻の中が狭くなっている症状を矯正します。
院長が語るアレルギーの話
当院の院長がアレルギーとは何かについて徹底的に解説いたしました。アレルギーについてより詳しく知りたい方はぜひご一読ください。
- 【1】免疫反応とは?
- 【2】抗原性とは?
- 【3】抗体の正体・IgE
- 【4】様々なアレルギー症状
- 【5】アレルギーの治療
- 【6】薬の種類
- 【7】免疫療法・手術
- 【8】発症者増加の理由
- 【9】体内の防衛反応