「蓄膿症」という名前でも知られている副鼻腔炎、実は100万~200万人の患者がいるといわれています。
このページでは副鼻腔炎とはどういう病気か、当院での治療がどういうものかなどについて解説いたします。
動画でも概要を解説しておりますので、よろしければ動画をご覧ください。
副鼻腔炎とはどんな病気?
副鼻腔炎とは、鼻の奥にある空洞である副鼻腔(ふくびくう)が炎症を起こす病気のことを指します。
副鼻腔は、前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞など、複数の部位に存在し、それぞれの部位で炎症を起こすことがあります。
副鼻腔炎の症状
主な症状としては以下のようなものがあります。
- 鼻水が出る
- 鼻水に色が付く(黄色い鼻水)
- 鼻づまり
- いびきをかく
- 鼻汁がのどにまわる(後鼻漏/こうびろう)
- 嗅覚障害
- 頭痛
- 発熱
風邪などに引き続いて起こった状態を特に急性副鼻腔炎、炎症が2~3カ月以上続いて慢性化したものを特に慢性副鼻腔炎と呼びます。
また、一般的に蓄膿症と呼ばれる病気は通常は慢性副鼻腔炎を指します。
副鼻腔炎の原因
細菌感染
黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、肺炎球菌などの細菌や細菌の作る毒素が病態形成に大きく影響します。
鼻のなかにある副鼻腔の換気と排泄の通路が粘膜のはれにより閉じてしまうことが主因と考えられています。
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎に慢性の副鼻腔炎を伴う場合があり、アレルギー性副鼻腔炎と呼ばれます。
血中の好酸球
血液中の白血球の一種、好酸球による異常な炎症が原因となる副鼻腔炎を特に好酸球性副鼻腔炎といいます。主な症状には、鼻づまり、鼻汁、顔の痛み、頭痛、嗅覚障害などがあり、鼻ポリープ(鼻茸)が見つかることもあります。
完治には長期間の通院治療を要する、再発しやすい、気管支喘息を伴うことが多いなどの特徴があります。近年増加傾向にあるといわれています。
副鼻腔炎の検査方法
問診
症状はいつからか、きっかけ、どのような症状があるかなどを確認します。
鼻の中を見る
鼻鏡や内視鏡を使って鼻の中を観察し、鼻の中の腫れや、鼻水の状態、鼻ポリープ(鼻茸)の有無を調べます。
鼻茸が認められたら、慢性副鼻腔炎の可能性が非常に高くなります。
嗅覚検査
5種類の嗅素をそれぞれ、薄い匂いから濃い匂いへ順番に匂いが分かるまで嗅いでいく「基準嗅力検査(T&Tオルファクトメトリー)」と、肘の静脈から強い臭いのあるアリナミンを注射し、その臭いを鼻の後ろから感じるかどうかを調べる「静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)」などが行われます。
画像検査
慢性副鼻腔炎の診断には画像検査が必要です。
CT検査、またはX線(レントゲン)検査をによって、鼻鏡や内視鏡で見えにくい場所の状態を見ることができます。
健康な人であれば空洞の副鼻腔が黒く写りますが、副鼻腔炎で粘膜が腫れたり膿が溜まったりしていると、灰色に写ります。
自宅でできる副鼻腔炎対策
鼻うがい(鼻内洗浄)
自宅でできる対策としては、鼻内を洗浄液で洗う鼻うがい(鼻洗浄)がおすすめです。
器械が手動のものや電動のものがいろいろと販売されています。それらを使って、定期的に鼻の中の洗浄を行います。
鼻うがいのやり方
- 前かがみの状態で「あー」と声を出しながら、洗浄液を鼻に流し込みます。
- 流し込んだ洗浄液を反対の鼻の穴から出します。(難しければ流し込んだ鼻の穴から出しても構いません)
- 洗浄後にやさしく鼻をかみます。
鼻うがいは専用の洗浄液か生理的食塩水で行うことが大切です。水で行うと鼻の中の粘膜内の浸透圧の差で粘膜を痛めることになりかねません。
この効果は個人差がありますので、2・3週間続けても一向に良い感じがしない場合は続けてもあまり意味がないかもしれません。
また、頻度は1日2回から、1週間に2回程度まで人それぞれですし、その時の炎症の具合によっても変わってきます。無理のない範囲で続けて見られてはいかがでしょうか。
できるだけ避けたいこと
喫煙
鼻粘膜の炎症を助長する作用があります。
飲酒
鼻粘膜はほとんど毛細血管でできています。アルコールは血管を拡張させる作用があるので、飲酒によって鼻粘膜が膨れます。これによって、鼻づまりが起こりやすくなります。
適量を飲む、かつ毎日飲むことは避けていただきたいと思います。
市販の点鼻液
鼻づまりが慢性的に起こると、市販の点鼻液を常用する人がかなりいらっしゃいます。これは、鼻粘膜を余計に腫れさせることになりますので、より強い鼻づまりの原因となります。
鼻づまりがひどければ、早めに耳鼻科を受診していただきたいです。
鼻に水・海水を入れる
鼻の中に水や海水という塩分濃度が粘膜と違う液体が入ると、浸透圧で粘膜を痛める可能性があります。
小児で風呂に潜って遊ぶ子がいますが、やめたほうが良いでしょう。
副鼻腔炎の主な治療法
副鼻腔炎が疑われる症状が長引く場合は耳鼻科を受診しましょう。
鼻洗浄
鼻腔内に温水と塩を混ぜた液体を流し込んで、副鼻腔内の膿や細菌を洗い流します。
ネブライザー療法
抗生物質やステロイド薬などの霧状の薬剤を鼻から吸いこみます。
薬による治療
点鼻薬(ステロイド点鼻液)
アレルギー反応や炎症を抑える効果があるステロイド剤は、鼻腔内に点鼻することで、副鼻腔炎の症状を緩和することができます。
ただし、長期使用には副作用があるため、医師の指導に従う必要があります。
抗ロイコトリエン薬
ロイコトリエンは炎症やアレルギー反応を引き起こす物質で、抗ロイコトリエン薬は体内でロイコトリエンに先回りしてその作用を抑えます。
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抗生物質(ペニシリン系・セフェム系)
副鼻腔炎の初期や膿性の鼻漏がひどくなった場合に使用します。細菌を直接攻撃し、迅速な効果を発揮します。
細菌検査に基づき最適なものが選ばれます。
抗生物質(マクロライド系)
細菌を抑える効果に加えて抗炎症効果もあり、長期間少量で使用することが特徴です。
副作用が比較的少なく、長期使用が可能です。
去痰薬(痰切り薬)
粘り気の強い鼻水を排出しやすくする薬で、副鼻腔内の粘膜の状態を改善します。
デュピルマブ(デュピクセント®)
鼻茸を伴う重度の慢性副鼻腔炎の新薬です。鼻茸の縮小により鼻づまり、嗅覚障害の改善が期待されます。
投薬治療によって改善しない、手術後も再発するなど、既存治療での効果が不十分な方に限り、利用対象となります。
手術
通院治療を数カ月行っても効果がないか、効果が不十分な場合には、内視鏡を使用した鼻内副鼻腔手術が行われます。
30年ほど前は歯ぐきを切ってほほの骨を削って副鼻腔内の膿を取り除く手術が行われていましたが、身体への負担が大きいものでした。
現在では内視鏡を使用した手術によって術後の回復が早く、顔の腫れや頬のしびれなどのリスクも軽減することができるとされます。
好酸球性副鼻腔炎などの難治性の慢性副鼻腔炎は、手術後の治療をおろそかにすると再発することがあるので、手術後にも耳鼻咽喉科専門医で診てもらうこと、手術前から使用していた薬を手術後も続けることが重要です。
副鼻腔炎の手術の概要を動画にて解説しております。よろしければご覧くださいませ。