患者さんからよく「耳垢をごっそり取るのにいいやり方はないか」というご質問をいただきます。確かに耳掃除をあまりせずに耳垢がたまっている状態はどうしても気になりますし、あまり清潔でないというイメージもあります。また耳掃除は気を付けてやらないと、耳の中を傷つけて耳から血が出ることもあります。
耳垢についての基礎知識
まずは耳垢について基本的な知識を解説いたします。
耳垢の質についてはこちらのページでより詳しく解説しております。
日本人の約7割の耳垢は乾いている
耳垢(みみあか・じこう)とは、はがれおちた古い皮膚やホコリと耳の分泌液が混ざったものです。
耳垢にはカサカサした「乾性耳垢」とネバネバ・ベトベトとした「湿性耳垢」とがあります。乾性耳垢と湿性耳垢は遺伝的に決まっていて、日本人の約7割が乾性耳垢と言われています。
おすすめの耳掃除のやり方
耳垢がごっそりとれるのが良いとは限らない?
私たち耳鼻科医は、耳の中を直接見て、たくさん耳垢がたまっている場合には、文字通り「ごっそり」取ることもめずらしいことではありません。耳垢を取る場合には耳用の特殊なピンセットをはじめ、耳垢鉗子、吸引、異物鈎(いぶつこう)など、様々な専門道具を使うからこそごっそりとることができます。
しかし、一般の方がご自分で行う場合は、そううまく「ごっそり」というわけにはいきません。
また、ごっそり取れるということは、普段こまめに耳垢を取らず溜まったままにしていたからともいえますし、もしごっそり取れたとしてもやり方によるものではなく、たまたま、といわざるを得ないのではないでしょうか。
だから、あまり耳垢をごっそり取ることを目指さないでいただきたいというのが耳鼻科医の正直な気持ちです。
一般的な耳かきではなく綿棒を使う
良く出回っている耳かきは外耳道を痛めたり、耳から出血してしまうことがあるため、耳鼻科医が一般に推奨しているのは綿棒でかるくおこなう、というものです。せっかく耳の中を綺麗にしようとしたのに、耳から出血してしまっては元も子もありませんし、ご自身やご家族の耳を傷つけてしまう危険性も高いです。
安定した姿勢で行う
耳掃除中に椅子が揺れる、子供が抱きついてくる、ペットが突進してくる、などでバランスを崩したり腕に何かが当たると、耳の中をついてしまい、外耳道を傷つけたり、ひどい場合には鼓膜に穴があいたりすることがあります。耳掃除をする場合には安定した姿勢で、周囲に当たるものがないことを確認して行いましょう。
もし耳掃除中に出血してしまった場合
もし耳掃除の際に出血してしまった場合、出血は早期に治まりますが感染のリスクがあります。必ず耳鼻咽喉科を受診してください。出血が止まってもかさぶたが痒くて強く掻いてしまうと再出血を招きますので注意が必要です。
病気で耳垢がごっそり取れる場合とは
無理に耳垢を取ろうとしていないのに、
外耳道真菌症
外耳にカビの炎症が起こっている状態です。外耳でカビの炎症が起こった場合には酒粕のようなモロモロした耳漏(みみだれ)が大量に出ることがあります。水分が抜けると正常な耳垢と区別がつきにくいことがあります。
外耳道真珠腫
外耳の慢性炎症の一種です。やはり白っぽいカス上の耳漏(みみだれ)が出ることがあります。進行すると外耳の骨を溶かすので、手術が必要になります。
耳鼻科で耳掃除を受ける場合
治療上耳垢除去が必要な場合は耳鼻科にて耳掃除を行います。またどうしても気になる場合は耳掃除だけのために耳鼻科を受診することも可能です。
耳垢が耳に栓をするようにふさいでしまう症状を「耳垢栓塞(じこうせんそく)」といいます。多くの場合は無症状ですが、難聴や耳閉感が表れる場合があります。耳垢栓塞の場合に自分で耳掃除をすると症状がむしろ悪化する場合があります。その際は耳鼻科にて耳垢栓塞の除去を行います。
耳掃除(耳垢栓塞除去)の費用
耳垢栓塞除去 | 初診 | 再診 |
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片耳 | 約1,200円 | 約600円 |
両耳 | 約1,400円 | 約800円 |