サーファーズイヤーの治療を実施している医師の中西 悠です
サーファーズイヤーの方が外耳道炎を起こすと、外耳道が極端に狭いため、処置が難しいことがあります。ここではサーファーズイヤーの外耳道炎の治療について記載します。
近くの耳鼻咽喉科で見てもらったけど、良くならない!聞こえない!痛い!とご連絡をいただくことがあります。
通常の外耳道炎であれば、ステロイド軟膏や、点耳薬(抗生剤やステロイド)、抗生剤内服程度で、あっさり改善することが多いです。
しかし高度のサーファーズイヤーの病変があり、鼓膜が見えないくらいの方が外耳道炎を起こすと、下記のような悪循環のサイクルにはまり、なかなか良くなりません。
- 外耳道の炎症、感染
- 外耳道の皮膚が腫れる、痛みがでる
- 点耳薬も届かず、処置困難
- ①へ戻って悪循環のサイクルへ
ここでは私(中西)の行っている処置を公開します。
これが一番良い方法かどうかわかりませんが、多くのサーファーの外耳道炎を診せてもらい、なんとか消炎しようとアレコレ試しながら効果のあった方法です。いろいろな手技があるので、実際にはこれらを組み合わせて行っています。
ここでは、サーファーの外耳道がパンパンに腫れていて、感染や痛みを伴っているようなケースを想定しています。
診察時にチェックすべきポイント
外骨腫(サーファーズイヤー)のどのポイントで炎症が強いかを確認します。
外耳道の皮膚がパンパンに腫れて、隙間がどこかわからない場合は対側耳を参考にします。反対側の耳の外骨腫の形態は、程度の軽いミラーイメージになっていることが多いです。しばらく炎症が続いていた場合は、外耳道皮膚がびらん状になっていることがあります。
頻度は少ないですが、炎症性ポリープを形成している場合もあります。ポリープについては、そのままにしていると消炎しにくいので、腫瘍性病変でなさそうと確認できれば、すぐに除去します。
真菌(カビ)の感染を伴っているときは、耳鼻科医が見れば、見た目で判別がつくことも多いのですが、耳漏(耳だれ)が長く続くときは菌検査を行うことがあります。細菌との混合感染の場合もあります。
耳処置
①通常の外耳道炎の場合。
- 外耳道の徹底的な洗浄、清掃。
- タリビット点耳薬/リンデロン点耳薬での洗浄。
- 顕微鏡下で、耳垢を徹底的に除去します。
- 比較的軽症であれば、腫れ上がった外耳道皮膚の隙間にリンデロン軟膏を塗り込むと、1日程度で腫れが引いて、外耳道が開通し、きこえも良くなることが多いです。
- 状態に応じて抗生剤の内服、鎮痛剤の頓用処方を行うことがあります。
②上記処置で、まったく外耳道に隙間ができないほど腫れが強いとき。
日程、時間の余裕があるときは、外耳道に1・2日間リンデロンVGガーゼを挿入します。
③とにかく急いでなんとかしたいとき。
小さく切ったシリコンシートをブジーのようにして、腫れた外耳道に挿入し一瞬だけでも隙間を作り、可能な限り深部まで掃除します。外耳道の隙間に小さく切ったベスキチンを挿入します。ベスキチンにはリンデロン軟膏を塗布。
ベスキチンが入らないときは、小さなシリコンシート(0.5mm~1mm厚くらい)を外耳道の隙間に入るところまで挿入しておきます、そこからリンデロン軟膏を浸透させます。
どうしても早期に消炎したいとき
(過去に経験した例では、明日手術予定なのに外耳道がパンパンに腫れているようなケース)
一日に2・3回、上記の処置をすると腫れが引くこともありました。ごく短期間ステロイド内服(PSL5mg/day)を行ったケースもあります。一度腫れ上がった外耳道は消炎するのに早くても1~2日ほど要するものと考えています。
処方例
点耳薬
- 2種併用 同時に使って、耳の中で混ざってもOK
- タリビット耳科用液 (抗生剤) 1日2回
- リンデロン点耳液(ステロイド) 1日2回
抗生剤内服
(必須ではないが、外耳道炎の程度に応じて処方)
- クラビット(500) 1錠 朝食後 (薬剤名:レボフロキサシン)
- あるいは
- フロモックス(100)3錠 毎食後 (薬剤名:セフカペンピボキシル塩酸塩)
痛み止め
特にこれでないと、というものはありません。
ロキソニン(60) 薬剤名:ロキソプロフェン 疼痛時 1錠内服など。
その他
耳のかゆみが強くて、触らずにいられないような場合には、抗ヒスタミン薬(タリオン、アレロックなど)の内服を処方する。あるいはステロイドと抗ヒスタミン薬の合剤であるセレスタミン錠を1~2錠/日。
外耳道炎で耳の痛みがあり、耳鼻科で処置してもらっても良くならない、という方、いらっしゃいましたら老木医院 中西 悠までお問い合わせください。