今までにないスギ花粉症治療薬「ゾレア®」とは

花粉症の新しい治療薬ゾレア<sup>®</sup>

長年、花粉症治療に携わってきた耳鼻科医の立場から、当院の医院長がスギ花粉症の新しい治療「ゾレア®(オマリズマブ)について解説します。

最近ではテレビに取り上げられるなど、注目度が上がっており、問い合わせも増えています。

ただし、ゾレア®による治療は厳しい条件を満たした患者さましか受けられません。誰しもが希望すれば治療を受けられるものではありませんので、その点も説明いたします。

アレルギー反応の仕組み

「ゾレア®」はスギ花粉症治療のための皮下注射による治療薬です。

そもそも、スギ花粉症のアレルギー反応とはどういったものなのでしょうか。

  1. スギ花粉が体内に入ってくると、スギ花粉だけに反応する抗体が作り出されます。
  2. その抗体は免疫をつかさどる細胞の表面に付着して、スギ花粉を待ち構えています。
  3. 細胞表面の抗体にスギ花粉(抗原)が結合すると、その細胞からヒスタミンが放出されます。そのヒスタミンなどが様々なアレルギー症状を起こします。
  4. その化学物質が鼻水や鼻づまりを起こします。

これまでの薬とゾレア®のはたらきの違い

従来の薬はこのヒスタミンなどの働きを抑えるという作用でした。つまり、アレルギー反応の最下流で症状をせき止める作用でした。

ところが、ゾレアは抗体と結合することによって細胞表面に抗体が付着するのを防ぎます。

つまり、スギ花粉が入ってきても、細胞表面に抗体が付着していないので、細胞がヒスタミンを放出するという反応が起きないのです。

従来の薬より上流でアレルギー反応を抑えることができるのです。

これまでとは違う高い効果が期待されます

少し誇張があるかもしれませんが、この薬はメチャクチャ効くんじゃないかな、というのがこの作用原理を理解して最初に思った率直な感想です。画期的な薬です。

残念ながら、薬なので全ての人に100%効く、というわけではありませんが、フィットした人には今までとは次元の違う効果を発揮するんだろうな、という直感は私にはあります。

しかし、医療を提供する医師として「絶対に効く」とは断言できません。薬の効き具合は、あくまでも、その人、個人個人に使ってみないことには確証は得られないからです。

こういう方におススメします

例えば、受験生で今年はスギ花粉症で集中力を落としたくないとか、この2,3か月は仕事上、重要な時期なので何とか鼻の調子をいい状態に保ちたいとか、そのような方には頼もしい味方になる治療だと私は確信しています。

また、ゾレア®の治療は重症な患者さんしか受けられません

スギ花粉症が重症かどうかは、定められた基準に基づいて耳鼻科専門医が判定します。残念ながら希望される患者さん全てに受けて頂ける治療法ではないことをぜひご理解ください。

ゾレア®治療にあたっての注意点

ゾレア®で治療を行うにあたっては以下のような注意点があります。

  • 1回の投与で2~4週間程度の効き目です
  • 薬価がかなり高価です※金額は症状などにより変動します
  • 他の治療が効果が薄い重症の方しか使用できません
  • スギ花粉症のシーズンしか使用できません

劇的な効果が期待できるため、本当は、スギ花粉症でお悩みの全ての人に強くお勧めしたいと思っています。

ただ、残念ながら、その効果は1回の投与で数週間程度しか効きませんし、薬価がかなり高価な薬です。

ですから、保険診療としては、他の治療で効果が薄い重症の人、しかもスギ花粉症シーズンしか使えません。

ゾレア®の副作用について

また、ゾレア®の投与では注射部位に以下のような副作用があらわれる可能性があります。

  • 赤くなる
  • かゆくなる
  • 腫れる
  • 痛い
  • 熱くなる
  • 硬くなる
  • 出血する

また、以下のような症状があらわれた場合、「アナフィラキシー」の可能性があります。

  • 気管支のけいれん
  • 失神
  • 全身のかゆみ
  • 呼吸困難
  • たちくらみ
  • くちびる、舌、のどの奥の腫れ
  • 血圧低下
  • 蕁麻疹

このため、投与後は医師・看護婦の指導に従っていただく必要があります。

治療を行える医療機関が限られています

そして、この治療は経験豊富な耳鼻咽喉科専門医しか行うことができないと厚生労働省から定められているため、受けることができる医療機関は非常に限られています。

さまざまな条件をふまえた上で、どうしても症状を軽くしたいという方は老木医院か、当院の分院であるはるか耳鼻咽喉科にまずはご相談ください。

監修医師

  • 老木 浩之
  • ・耳鼻咽喉科サージクリニック老木医院 理事長
  • ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
  • ・厚生労働省 補聴器適合判定医師
  • ・医学博士

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